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2022.08.18

IQVIAは8月17日、2022年第2四半期(4月~6月)の医療用医薬品市場統計(薬価ベース)を公表し、前年比1.3%増となったと報告した。21年第2四半期以降、5四半期連続で前年比プラス成長となる。施設区分別にみても、病院は1.1%、開業医1.6%、薬局その他1.3%とそれぞれ伸長しており、特に、開業医の伸びが病院・薬局その他の増加率を上回ったのは5年ぶり。製品別ではオプジーボがキイトルーダを押さえて売上トップを維持。糖尿病治療剤では前年比70.4%増と大幅伸長したSGLT2阻害剤フォシーガが薬効内トップに躍り出た。 22年第2四半期の国内医療用医薬品市場は、4月に薬価通常改定(薬剤費ベース6.69%引き下げ)があったものの、薬価ベースでは前年比1.3%増、金額ベースで343億円上回った。当期は伸び率こそ低めであったものの、5四半期連続してプラス成長を持続している。ちなみに、薬価改定のあった18年第2四半期の伸び率は△1.3%、同じく20年は2.5%減となっている。市場別にみると開業医市場の伸び率が高かった。 ◎薬効別トップは抗腫瘍剤 伸び率トップは診断用検査試薬で27.5%増 薬効別にみると、金額ベースでは、1位は抗腫瘍剤で4424億3900万円(前年比5.8%)、2位は糖尿病治療薬の1712億2800万円(同5.4%)、3位は免疫抑制剤の1399億8200万円(同7.1%)、4位は抗血栓症薬の1109億8000万円(同0.1%)と続く。5位の診断用検査試薬が前年比27.5%で、順位も9位から5位にランクアップした。新型コロナの感染拡大に伴う検査体制の強化が影響している。逆に前年比マイナスとなったのは、8位のレニンーアンジオテンシン系作用薬で前年比△7.1%、次いで6位の眼科用剤の△3.9%、7位の制酸剤、鼓張及び潰瘍治療剤の△3.6%となった。このほか、昨年7位のその他の中枢神経系用剤がランクアウトし、その他の治療を目的とする薬剤が新たに10位でランクインした。 ◎製品トップ10 1位オプジーボ 2位キイトルーダ 売上上位製品をみると、1位はオプジーボの373億4300万円(前年比21.8%)、2位はキイトルーダで320億4100万円(同1.6%)、3位はリクシアナで298億2300万円(同15.8%)、4位はタグリツソで285億3500万円(同8.9%)、5位はタケキャブで274億600万円(同△0.2%)となった。 上位10製品の増加率をみると、1位のオプジーボが最大で、リクシアナ、6位のサムスカ(11.5%)と続く。これら3製品が二桁増。一方で減少率は10位のアバスチン(△12.2%)が最大で、次いでタケキャブとなった。上位10へのランクイン製品は、9位のアイリーアで225億2000万円(同6.4%)。逆に、ランクアウトはイグザレルトだった。 ◎糖尿病治療剤の薬効内トップにSGLT2阻害薬フォシーガ 糖尿病治療剤は、薬効内トップが交代した。2011年第3四半期から薬効内トップだったDPP-4阻害薬ジャヌビアに代って、SGLT2阻害薬フォシーガが1位を奪取した。フォシーガの伸び率は前年比70.4%増。このほかにもジャディアンスは前年比30.3%増、DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤のトラディアンスハイゴウが前年比30.4%増と大きく伸長している。逆にDPP-4阻害薬のトラゼンタ、グラクティブは前年を下回った。

バイデン米大統領は8月16日、気候変動対策や処方薬の負担軽減策などを盛り込んだ「インフレ抑制法案(IRA)」に署名し、成立させた。予算規模は4300億ドル(約57兆円)。同法の目玉となる処方薬のコスト削減では、メディケアパートDを利用する5000万人の高齢者を対象に薬局で購入する処方薬の費用上限を年間2000ドルに制限した。さらに処方薬の適用範囲を改善し、メディケアの薬価を引き下げることで、患者の医薬品へのアクセスギャップを埋める狙いを込めた。これに対し米国研究製薬工業協会(PhRMA)がすかさず反応。Stephen J. Ubl社長兼CEOは、「根本的な課題解決にはならない」との声明を発表し、「革新的な治療へのアクセスをいまよりも強化するような方法を引き続き確立していく」との見解を表明した。 ◎「今後数年間で1300万人が健康保険で年平均800ドルを節約し続ける」バイデン大統領 「メディケアに加入している場合、処方箋の数に関係なく、がんであろうと他の病気であろうと、年間2000ドル以上支払う必要はありません。今後数年間で1300万人が健康保険で年平均800ドルを節約し続けます」-。バイデン大統領は「インフレ抑制法案(IRA)」への署名に際し、こうスピーチした。 世界的な物価高やエネルギー価格の高騰、さらには地球規模の気候変動により、社会経済環境は日々刻々と変化している。特に米国においては物価高騰を懸念する声が国民から高まっており、今年11月に中間選挙を控えるバイデン大統領と与党・民主党にとって、一般消費財を含む税制優遇やヘルスケア費用の軽減など対応が迫られている。 ◎薬局で処方薬に支払う金額を年間2000ドルに上限設定 今回成立したインフレ抑制法は、メディケア受給者の中でも、特にラテン系アメリカ人に主眼が置かれている。この日公表されたホワイトハウスのファクトシートでは、65 歳以上のメディケア受給者のうち、医薬品を購入できない可能性のあるラテン系受給者は白人受給者の約1.5倍に及ぶことが指摘された。加えて、医薬品が高価なため必要な処方箋を満たさない可能性のあるラテン系受給者は白人受給者の約2倍と報告している。さらに、ラテン系以外のアメリカ人は、ラテン系アメリカ人より帯状疱疹ワクチンを接種する可能性が2倍以上高いことも問題視した。 こうした状況からインフレ抑制法では、高齢者が薬局で購入する処方薬に支払う金額を年間2000ドルに上限設定した。これにより毎年約140万人の受益者が直接恩恵を受ける。また、糖尿病を治療する高齢者330万人がインスリンに支払う金額を1か月あたり35ドルに制限した。さらに、メディケア受益者に帯状疱疹ワクチンを含む多数の無料ワクチンへのアクセスも可能とする方針も明示した。一方で、高価な医薬品の価格についてメディケアが製薬企業と交渉できるようにした。具体的には、製薬会社がインフレよりも早く価格を引き上げた場合にメディケアにリベートを支払うよう要求することで、高齢者の処方薬のコストをさらに引き下げる考えも明示した。 ◎PhRMA 患者アクセスに強い警戒感「アクセスをより強化する方法を確立したい」 こうしたバイデン政権の方針に対し、野党・共和党からは実効性を疑問視する声が聞かれている。PhRMAも即座に反応し、「(メディケア受給者の処方薬価格を)値ごろ感のある価格にするということだけで根本的な課題解決にはならない」との認識を表明。Stephen J. Ubl社長兼CEOは、革新的な治療(生命を救う治療)への患者アクセスに強い警戒感を示し、PhRMAとして(革新的新薬への)アクセスをいまよりも強化するような方法を確立していく考えを強調した。

第一三共は8月13日、同社の抗体薬物複合体(ADC)技術に関する米・Seagen社との紛争で、仲裁廷がSeagen社の主張を全面的に否定する判断を下したと発表した。眞鍋淳社長兼CEOは、「当社のADC技術が独自に開発されたもので、係争対象となったADC技術に関する全ての知的財産権が当社に帰属することを改めて確認できたことを大変嬉しく思う」と強調した。 第一三共はSeagen社の前身であるSeattle Genetics, Inc.(シアトル ジェネティクス社)と2008年7月から15年6月にかけてADCの共同研究を実施していた。ただ、この共同研究に関連してSeagen社は、ADC技術に関する特定の知的財産権が同社に帰属すると主張。これを受け第一三共は2019年11月にデラウェア州連邦地方裁判所にSeagen社を被告として確認訴訟を提起する。一方のSeagen 側も社米国仲裁協会に仲裁の申し立てを行っていた。 今回の仲裁廷の判断により、第一三共はADC技術に関する当該知的財産権をこれまでどおり保持することになり、今後もADC 製品の開発および商業化を進めていくことになる。眞鍋社長兼CEOは、「第一三共の強みであるサイエンス&テクノロジーを誇りに思うとともに、がん治療において新たな標準治療を必要とする患者さんに当社のADC製品をお届けするよう取り組んでまいります」とコメントした。