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政府の経済財政諮問会議(議長・岸田文雄首相)は9月14日、22年後半の重点課題とマクロ経済運営について議論した。新内閣発足後、初開催となる。民間議員から年後半の主な政策課題が提示され、社会保障分野の経済財政一体改革では、①患者や関連産業に裨益(ひえき)する医療・介護DX推進、②医療・介護サービスの機能分化・連携の徹底、③インセンティブ改革の推進等による医療費・介護費の適正化-などが示された。世界的な物価高やエネルギー価格の高騰は、すでに医薬品の原料調達や、医療機関が購入する医療機器・診断薬の価格値上げなどに影響している。諮問会議で岸田首相は10月中に総合経済対策を取りまとめる方針を明言。政府は物価高騰対策を織り込んだ経済対策を含む2023年度予算編成作業に着手する。 諮問会議で岸田首相は、「物価・賃金・生活総合対策本部で決定した物価高騰対策を早急に実行に移す」と明言。「新しい資本主義を大きく前に進めるための総合経済対策を10月中に取りまとめる」と意欲を示した。政府は9月8日に物価高騰への対応として、電気・ガス等のエネルギーや食料品等の価格高騰に苦しむ生活者、事業者への対応として総額6000億円の地方創生臨時交付金を設けた。支援対象先には地域の医療機関等も含まれている。 ◎ヒト、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXへの官民投資を推進 この日の諮問会議では、物価高騰対策を主眼に、岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の実現に向けて、ヒトへの投資、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)といった成長分野への官民投資を推進する方向を民間議員から提案した。政策課題には社会保障分野も含まれる。具体的な施策では「医療・介護DX」の推進を掲げた。6月に閣議決定した骨太方針2022では、岸田首相を本部長とする「医療DX推進本部(仮称)」の設置を明記したほか、「全国医療情報プラットフォームの創設」、「電子カルテ情報の標準化等」、「診療報酬改定DX」の取り組みを行政と関係業界が一丸となって進める方向もすでに示したところ。 ◎インセンティブ改革の推進等による医療費・介護費の適正化も 一方、医療・介護サービスの機能分化・連携の徹底に加えて、気になるところでは、インセンティブ改革の推進等による医療費・介護費の適正化にも取り組む方針を示している。インセンティブ改革については、「健康ポイント制度」など、これまでも度々議論の俎上にあがっている。個々人の健康努力を支援し、医療・介護の必要を抑制するというもの。過去には病床の再編加速を狙った診療報酬による誘導や、過剰投薬や残薬問題を解消するための報酬体系の見直しも議論されている。岸田内閣が掲げる「新たな資本主義」ではDXの推進も政策課題の一つに掲げており、マイナンバーカードによるオンライン資格確認や23年1月から導入する電子処方箋などの利活用も視野に入れているようだ。 ◎物価高騰による医療機関経営への影響をどうみるか? 加えて、見逃せないのが物価高騰による医療機関経営への影響だ。病院、診療所、薬局にとって、エネルギー価格高騰による電気代上昇に加えて、原材料価格の高騰に伴う医療機器・診断薬価格も上昇しており、卸業者と医療機関の間で値上交渉も今秋から始まっている。一方で医療用医薬品は公定価格(薬価)のため、直接的に物価高やエネルギー価格高騰に伴う影響は出ていないが、すでに厚労省に設置した流通・薬価に関する有識者会議において、不採算品目の薬価引き上げを求める声も一部の有識者や製薬業界内から出ている。同省も物価高騰や為替変動による不採算品の状況調査で関係業界に事務連絡を発出した。いずれも23年度予算編成に直結する毎年薬価改定の議論とも絡むことから、昨今の経済状況が少なからず影響を及ぼすものとみられる。
2022.09.12

協和キリンは2021年7月に営業支援システムを刷新し、現場MRの強みをデータで補強するデータドリブンな営業モデルの構築に取り組んでいる。営業本部に新設した「営業デジタル推進室」を軸に、これまで営業所長向けの研修を2回行った。研修はデジタルリテラシー向上を主眼としたもの。研修受講後には、活動後24時間以内に日報を入力する割合が上昇するなど、その成果も見え始めているという。 ◎21年4月に「営業デジタル推進室」新設 同社は営業支援システムの刷新に先駆けて、21年4月に「営業デジタル推進室」を営業本部に新設した。同推進室の戸田圭紀グループ長(デジタル企画グループ/データアナリティクスグループ)は、「新システムはローンチしたものの業界内でデジタルの取り組みが遅れていた。外部調査の結果からはデジタルを用いたアプローチが少し見劣りしており、なんとかシステム導入の遅れを、運用で取り戻したいと考えた」と語る。また、「当社に一番合うやり方ですすめていけば、現状の周回遅れを少しでも縮められると考えた」と強調する。 そこで考案したのが、営業のフロントラインをカバーする所長やMRを対象とした研修だ。「デジタルリテラシーの向上により、営業本部内に積極的にシステムを活用する雰囲気を作りたい」との想いからデジタル企画グループの堀内祥仁マネージャーと具体的な方法についての検討に着手した。堀内氏も同様に外部調査の結果が芳しくないことに問題意識を感じていたという。熟考の結果、「現場マネジメントの最前線にいる営業所長の率先垂範が効果的」との結論に辿り着き、「見る立場でもあり、見られる立場でもある営業所長が実践してこそ、デジタルの必要性と有用性がMRに伝わる」とその意図を説明した。 営業所長研修は2回に分けて行われた。21年末に行った1回目の研修では、デジタルリテラシーに絞ってプログラムを実施した。堀内氏は、「ここは非常にスタンダードな内容を理解して頂き、腹落ちしやすいような環境を整えた」と強調する。2回目の研修では、1回目の内容をベースにMRに展開する資料(マテリアル)を作成した。例えば「現場の医師にこんなことを聞いてみて欲しい」だったり、「自分たちの認識に齟齬がないかどうか」など、実用的な内容にアレンジメントしたという。堀内氏は、「軸を営業所長にして、自らが受けた研修の均一化した内容、統一化されたマテリアルで展開することにより、効率的に1100人のMRのデジタルリテラシーを上げていくことができる」と強調する。加えて、担当する営業所の特性を考慮して、「営業所長が一定のアレンジメントを自由に加えられるようにした。そのやり方は営業所長に一任した」と明かしてくれた。 ◎日報の早期入力が大幅改善 具体的に可視化された事例も出てきている。営業デジタル推進室では、21年7月以降の新システムに関する様々な状況をトラッキングしてきた。例えば、日報の早期入力を所長やMRに求めているが、研修前と研修後を比較して早期入力は約20%改善した。堀内氏は、「たぶん所長から(新システムで)“情報を蓄積していこう”という声があったと想像できた。そこでMRもやってみようということになったのではないか。所長の号令に皆がついてくるような良い組織だと感じた」と語っている。 ◎「営業本部Our Vision 2025」にデジタル技術チャレンジも 新システムの刷新と同じタイミングで営業本部長に曽根川寛氏が就任する。曽根川本部長は「営業本部Our Vision 2025」を策定する。ビジョンでは、Continue to Challengeとして、「今まで築き上げてきた歴史と経験に加え、デジタル技術やエリア担当制など新しい“もの”を積極的に取り入れ、自分たちの壁を乗り越えるチャレンジを続け、グローバル・スペシャリティファーマにおいて輝き続ける最高のチームになろう」と書き込んだ。 営業デジタル推進室の野口雅弘室長は、「このビジョンの啓蒙活動をやってきた時期とも重なった。ビジョンにはデジタル技術を積極的に取り入れることもメッセージとして刻んだことも、奏効する一因となったのではないか」と話す。「誰も取りこぼさない」―― 野口氏は強調する。「所長が若い人にデジタルは任せておけば良いとうい形には絶対ならないように進めてきた。だから最初から所長向けの研修とした」とも強調する。また、研修では所長同士のディスカッションも取り入れたことを明らかした。「若手所長からベテラン所長まで、単にデジタルの話だけでなく、自分たちのツールやシステムの話を通じて自覚を持ち、意識をあげることができたのではないか」と述べ、まずは第2弾の取り組みに安堵感を表明した。

後発品の供給不安が続くなかで、実際の流通状況と製薬企業からの情報との間に乖離を指摘する管理薬剤師の声が約6割にのぼることがわかった。日本保険薬局協会(NPhA)が9月8日の記者会見に示したWeb調査結果から明らかになった。後発品の流通状況について適時・的確に入手できているとの回答は2割にとどまった。流通問題検討委員会の畔上和也氏は、予定通り医薬品が納入されなかったために患者に手渡せないなどの事態が起きていると説明。「我々だけではなく、その先には患者がいる。流通情報が乖離しないよう、メーカー、医薬品卸により一層注力、努力いただきたい」と呼びかけた。 調査は、日本保険薬局協会(NPhA)の流通問題・OTC検討委員会・薬局機能創造委員会が会員薬局の管理薬剤師を対象にWebで実施した。アンケート実施期間は7月27日~8月24日までで、3548薬局から回答を得た。後発品の供給不安をめぐっては、ジェネリックメーカーが増産などの対応を取っているものの、医療現場からは供給不足を指摘する声が依然としてあがっている。過去の取引実績などを踏まえた対応による在庫の偏在や、情報提供不足などの課題も指摘されている。 ◎「後発品の流通状況が適時・的確に入手できない」は5割超 調査では、後発品の流通状況について適時的確に入手できているか尋ねたところ、「全く思わない」が13.4%、「あまり思わない」が39.6%で5割超を占めた。「とても思う」は1.6%、「やや思う」が19.1%、「どちらとも言えない」は26.3%だった。 実際の後発品の流通状況と製薬企業からの情報との乖離があるか尋ねたところ、「とてもある」が18.4%、「ややある」が37.2%で、情報に乖離があるとの回答が約6割を占めた。「どちらとも言えない」が30.6%、「あまりない」は12.8%、「全くない」は1.0%にとどまった。一方、実際の後発品の流通状況と医薬品卸の情報について、乖離が「とてもある」は9.1%、「ややある」は29.0%で、約4割だった。「どちらとも言えない」が35.5%、「あまりない」が24.6%、「全くない」が1.7%だった。 製薬企業からの流通情報の開示・提供が適時・的確かを尋ねたところ、「全く思わない」が18.4%、「あまり思わない」が37.1%で、あわせて6割を占めた。「どちらとも言えない」は23.1%、「やや思う」は18.5%、「とても思う」は2.8%だった。医薬品卸の情報提供については、「全く思わない」が11.4%、「あまり思わない」が30.0%、「どちらとも言えない」が23.6%、「やや思う」が28.3%、「とても思う」が6.7%だった。 ◎「薬局規模で優先順位をつけないでほしい」、「メーカーが患者に説明しないことが問題」との声も 自由回答では、「どこに薬を配分するか卸の裁量で決まってしまうため、出荷調整がかかる前から定期的に購入していた医薬品まで全く入庫しなくなったりしている。薬局の規模などで優先順位をつけないでほしい」、「後発品以外の薬剤も出荷調整となっているなかで、購入実績がない薬局への納期がわからないと回答されることが多く、新規に受け付けた処方箋の薬剤が入手できないなどの問題がある」、「安定して同じメーカーの後発品が入ってこないため、毎回違うメーカーでお渡ししている。調剤過誤の原因にもなりそうで困っている」などの回答が寄せられた。 「流通の安定化はメーカーの義務であると認識している。何ら頭の罰則が必要ではないか。“納品できません”だけではなく、どういった対応が適切であるのか等、対応方法についてもメーカー、卸協力のうえ、最善の検討を行ったうえで、情報伝達してほしい」、「薬局が原因となっているものではないのだが、結果として患者からのクレームが薬局へと向かってしまっている。メーカーから患者への説明がないことが問題だ」など、製薬企業の姿勢を問う声もあがった。 ◎畔上氏「メーカー側も卸に出荷して終わりではなく、店舗に届くまでサポートいただきたい」 畔上氏は、「卸やメーカーに流通状況を確認し、明日納品と聞いていても、実際にはその日に納品されない。過去実績に応じて納品されるため、タイムリーに納品されないこともある。医薬品卸のセンターには納品されているはずだが、偏在が起き、局所的に納品されないこともある。実際に現場では、患者さんにお渡しする予定の医薬品がお渡しできず、困っている」と説明。「卸は現場に近いので情報の精度は高いが、メーカー側も卸に出荷したから終わり、ではなく、きちんと店舗に届くまでサポートいただきたい」と話した。 なお、後発品の流通状況について22年1月時点と比較して尋ねたところ、「悪化している」は33.3%、「やや悪化している」が21.8%、「変わらない」が30.6%だった。「やや改善された」は14.2%、「改善された」は0.1%にとどまっており、依然として供給不安が続いている状況にあることも浮かび上がった。

日本保険薬局協会(NPhA)の首藤正一会長(アインホールディングス)は9月8日の記者会見で、米アマゾン・ドット・コムが中小薬局とタッグを組み、国内の処方薬のネット販売に参入するとの一部報道について、「アマゾンがやろうとしていることに関して、我々にできないことは基本的にはないと思っている」と牽制した。特に、リアル店舗での強みに自信をみせ、「かかりつけ薬剤師機能を含めて、機能をどれだけ高めていけるかにかかっている」と話した。 ◎Amazonの日本参入「我々業界にとっては驚くようなことではない」 米アマゾンは2018年にオンライン薬局大手のピルバックを買収し、「Amazon Pharmacy」を立ち上げ、米国で処方薬のネット販売に参入している。首藤会長は同社の日本市場での事業参入について、「アマゾンが実際に薬局に話を持ちかけてきたこともあり、十分予想されたこと」と明かし、「我々業界にとっては驚くようなことではない」と強調した。アマゾンの参入については、「仮にアマゾンが法的なものをクリアし、安全性も担保したなかでこういう事業をやってくるということであれば、利用する患者側にとっては選択肢が増えることであり、悪いことではないと認識している」とも話した。 ◎「かかりつけ薬剤師機能を含めて、機能をどれだけ高めていけるかにかかっている」 そのうえで首藤会長は、「脅威に感じていることはたくさんあるが、いまに始まったことではないと思っている。数年前からどう対応するかは準備を進めてきた」と自信をみせた。特に、リアル店舗の強みを強調。「我々がどれだけリアル店舗を患者にとってなくてはならないものだという認識を与えるようなものに仕上げていくか。かかりつけ薬剤師機能を含めて、機能をどれだけ高めていけるかにかかっている」と話した。 日本で薬局ビジネスに参入する際のアマゾン側の最大のメリットは患者宅への配送にあると言われる。首藤会長は、「配送に関して、宅配の食事などを絡めてやることも実証実験で行っているところもある。準備はいくらでもできる」と反論する。23年1月に電子処方箋の導入も予定されるが、「電子処方箋に関しても我々の得られるメリットがずっと大きいと思っている。これにより、アマゾンの参入が加速されて困るとは思っていない」とも話した。 ◎電子処方箋 会員の5割が「23年3月までに全薬局導入を目指す」 同日の会見では、電子処方箋についての調査結果も報告。「23年3月までに全薬局において導入を目指す」と回答した薬局が53社(53.5%)、7788薬局(61.3%)と、積極的な姿勢で臨む薬局の多いことを紹介した。なお、調査はNPhA正会員を対象にWebアンケートとして実施し、101社、1万2714薬局から回答を得た。 首藤会長は、普及に向けた課題として、薬剤師の認証に用いるHPKIカードにかかるコストが高額になることをあげ、懸念を表明。「民間署名サービスなどが使えるなど、柔軟に対応していただければ電子処方箋の導入が進むのではないか」と改めて訴えた。