「お勧め本、東畑開人「聞く技術 聞いてもらう技術」(ちくま新書)のご紹介」
「お勧め本、東畑開人「聞く技術 聞いてもらう技術」(ちくま新書)のご紹介」
「営業所がなくなりつつある今だからこそ読んでもらいたいコミュニケーションのノウハウについて書かれた好著」
すでに、巷で評判の本なので読んだ方も多いかもしれないが、大佛次郎論壇賞、紀伊國屋じぶん大賞2020をW受賞した人気カウンセラー、東畑開人(とうはたかいと)著、「聞く技術 聞いてもらう技術」は、コミュニケーションのノウハウがぎっしりつまった、実践的な好著だ。
まず、一般的に、「聞く」よりも「聴く」方が重きを置かれているが、「浅はかでした。どう考えたって、「聴く」よりも「聞く」の方が難しい」と書かれていた。
「聞く」なんて、誰でもできるじゃないかと思ってしまうが、「心の奥底に触れるよりも、懸命に訴えられていることをそのまま受けとるほうがずっと難しい」、「言っていることを真に受けてほしい」とある。
なるほど、「聞く」をどうやったら回復できるのか、今日から使える技術が惜しげもなく披露されていて、珍しく新書に付箋紙をたくさん張ってしまった。
「「聞く」は「聞いてもらう」に支えられています」、「「聞く技術」は「聞いてもらう技術」によって補われなくてはなりません」とある。
「聞く技術小手先編」では、「時間と場所を決めてもらう」、「眉毛にしゃべらせよう」、「返事は遅く」、「奥義オウム返し」、「なにも思い浮かばないときは質問しよう」など、12の技術が記されている。そののちに、「なぜ、聞けなくなるのか」、私たちのコミュニケーション不足や孤立無援とはどういうことかが、説明されている。
そして、何より知りたかった、「聞いてもらう技術小手先編」が紹介されていて、「日常編」では、「隣の席に座ろう」、「トイレは一緒に」、「ZOOMで最後まで残ろう」、「単純作業を一緒にしよう」、「悪口を言ってみよう」など、営業所がなくなったMRにこそ読んでほしい「技術」が満載だ。さらに、「緊急事態編」では、「ワケありげな顔をしよう」、「トイレに頻繁に行こう」、「早めにまわりに言っておこう」、「薬を飲み、健康診断の話をしよう」と突っ込んだ「技術」も教えてくれる。
「誰かの話をきいてもいいし、誰かに話を聞いてもらってもいい」、ちゃんと、「聞く」だけで、世界が劇的に変わる。
「話をする」、「聞いてもらう」というのは、一見、単純だが、底知れぬ難しさがあり、「ケアの原点」でもあることが、この本を通じてよくわかった。
2023/11/24