35歳定年説について考えてみる

「一億層総早期退職時代に35歳定年説が流れてきた、さて、どうしたものかと考えてみる」

私の息子が今年、大学を卒業し、4月からITベンチャー企業に就職することが決まった。

その息子が最近、転職していく優秀な先輩と食事をした際に、「これからは、35歳定年の時代が来る」と言われたそうだ。

「35歳?」、アスリートでは俗に35歳の壁と言われているが、サラリーマン、いわゆる60歳定年が当たり前の私には、にわかには信じ難かったが、冷静に考えてみるとあながち間違いではないかもしれない。

幸福について研究する社会科学者、アーサー・C・ブルックス『人生後半の戦略書』(SBクリエイティブ)によれば、GoogleやアップルなどGAFAMと呼ばれている「テック企業の創業者は20代で莫大な名声と富を得るが、30歳までに想像力が衰える、金融関係者も36歳から40歳までがピーク」、「革新的なアイデアや製品を生み出す人は、概して流動性知能が豊かです。知能テストを専門としていたキャッテルの観察では、流動性知能は成人期初期にピークに達し、30代から40代に急速に低下しはじめました」と記されている。

流動性知能とは、「推論力、柔軟な思考力、目新しい問題の解決力を指します」。

知能は「流動性知能」だけではないようだ。

「「結晶性知能」も存在します。結晶性知能とは、過去に学んだ知識の蓄えを活用する能力です。流動性知能だけを頼りにキャリアを積んでいれば、かなり早期にピークと落ち込みを迎えますが、結晶性知能の必要なキャリアを積んでいるか、もっと結晶性知能を活かせるようにキャリアを再設計できれば、ピークが遅れる代わりに、落ち込みの時期もーー来ないとは言わないまでもーーかなり先に延ばせるのです」。

さて、製薬業界は現在、未曾有の「早期退職時代」を迎えている。

ダイバーシティを謳っていながら、50歳以上は、退職勧奨リストに入っている。

この流れは変わらないだろう。利益を上げていようがいまいが、どんどんスリム化していく。

生産人口が減って少子化問題が喧しいが、製薬業界はまだまだ人あまりなのかもしれない。

してみれば、定年年齢を大幅に引き下げていくことも大いに考えられる。

すでに、いま、現実的には50歳定年だ。「35歳定年」を見据えた時に、長い、定年後を迎えた世代はどうすべきか、考える時がきたようだ。

「結晶性知能」を生かした、キャリアの再設計が見つかれば、面白いかもしれない。

2023/11/24